レビュー

「もののけ姫」って何であんなに傑作なんだろう…

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1997年に公開され193億円という記録的大ヒットとなった「もののけ姫」
公開から20年以上経った今でも根強い人気があり、「スタジオジブリで一番の傑作だ」と言う人も少なくありません。
何度見ても面白いと思える本作の魅力は一体何なのか!徹底解剖だ!

あらすじ

山里に住む若者アシタカは、怒りと憎しみにより“タタリ神”と化した猪神から呪いをかけられてしまう。呪いを解く術を求めて旅に出るアシタカはやがて、西方の地で“タタラ”の村にたどり着く。エボシ御前が率いるその村では、鉄を造り続けていたが、同時にそれは神々の住む森を破壊することでもあった。そして、そんなタタラ達に戦いを挑むサンの存在をアシタカは知る。人の子でありながら山犬に育てられた彼女は“もののけ姫”と呼ばれていた……。

キャッチコピーの『生きろ。』


たった3文字のキャッチコピーなのですが、この『生きろ』という言葉は我々の脳裏に強く焼き付かれます。
コピーライターの糸井重里氏と宮崎駿氏で何通ものFAXでのやり取りが行われ、やっとのことで誕生したキャッチコピーが「生きろ。」なのです。

ちなみに本作に込められている「生きる」というイメージについて宮崎駿監督は

百億の人口がねぇ、二億になったって別に滅亡じゃないですからね。そういう意味だったら、世界中の野獣は、もう滅亡、絶滅していますよね(笑)。そうですよ。元は百匹いたのに、今は二匹しかいないなんて生きもの一杯いますからね。そういう目に、今度人類が遭うんでしょ、きっと。でもそれは滅亡と違いますね。僕等の運命ってのは、多分、チェルノブイリで、帰ってきた爺さんや婆さん達が、あそこでキノコ拾って食ったりね、その『汚染してるんだよ』って言いながら、やっぱり平気でジャガイモ食ってるようにして生きていくだんろうなっていうね…まぁ、その位のことしか言えないですよね。それでも結構楽しく生きようとするんじゃないかぁっていうね、どうも人間ってのは、その位のもんだぞって感じがね…
―宮崎駿『もののけ姫はこうして生まれた』136-137項

と語っています。

完璧すぎる世界観


サンとアシタカ。
ヒイ様、エボシ御前、ジコ坊、トキに申六。
石火矢衆、浅野侍、唐傘師匠連、ジバヒリ
荒ぶる巨大な神々たちとその頂点に立つシシ神
そしてこの全てを包み守りこむ太鼓の照葉樹林…

すばらし過ぎるんです。テレビ越しでも確かに伝わる感動。一目見た瞬間に“もののけ姫ワールド”の虜になると同時に、間違いなく傑作であるという確信を与えてくれます。
しかも何度見ても感じてしまう。その圧倒的な世界観の構築がもののけ姫が持つ大きな魅力です。
今となってはPCでアニメーションを作るのが当たり前となりましたが、当時はセルに絵の具を塗り合わせてカメラで撮影する方法が主流。
セル画ならではの良い意味での荒々しさが本作の雰囲気と絶妙にマッチしているんです。

ご都合主義とは無縁のキャラ達


もののけ姫に登場するキャラにご都合主義のキャラなんて一人もいません。
一人一人が確固たる意志をもって行動しており、言動の一つ一つにきちんとした意味があります。
皆必死で生きようともがくその姿に心打たれてしまうのです。
アニメキャラなのに、どんな人間よりも人間らしく生々しい立ち振る舞いをする彼らに驚くばかり…。

唯一“アニメっぽいキャラ”が女子にも大人気「アシタカ」なんですが、アシタカがいることによってキャラの均等性が取れ絶妙なバランスの人間模様を生み出しています。
某ディ〇ニーとは逆を行く「反・ご都合主義」の生き様は何度見ても心に訴えかけてくるパワーが凄いです。(あっ、ディ〇ニーも大好きですよ笑)

敢えての「静かさ」


各主要キャラが登場する場面には独特の「静かさ」が設けられています。
サンがモロの君と共に月明かりの下で遠くをみつめるシーン
アシタカとヤックルが崖の上を歩くシーン
サンを迎え撃つ前のエボシ率いる村人が集う集落のシーン

そのすべてに独特の静寂が組み込まれているんです。そうまさに「嵐の前の静けさ」というやつです。
これから何かが動き出すぞ…!というゾクゾク感をくれる演出が視聴者の心を掴んで離しません。

アンチヒューマニズム


もののけ姫に秘められている本当のテーマとは何なのか。数々の考察がありますが、私は「反人間主義」なのだと思います。

かつては自然と共存していた人間ですが、今となってはどうでしょう。森林伐採や環境汚染の数々…。そう我々は自然を敵にしてしまった。
いつの間にか自然は人間にとって都合の良いアイテムでしかなくなった。それでも“自然との共存”を求める私たち。完全に我儘であり自己満足でしかありません。

サン=自然
アシタカ=人間

このように捉えれば、本作が本当に伝えようとしていることが段々と見えてくるはず。
アシタカがサンに言う台詞
「ともに生きよう。」
それに対してサンはこう言います
「人間を許すことは出来ない。」

ハッとしました。自然と共存なんて体のいいことを言っている我々はエゴの塊だったのだと。ではどうすれば良いのか。
その「どうすれば良いのか」という疑問にも捉えられるメッセージこそ、もののけ姫で伝えたかったことなのだと思います。

アシタカとは我々自身なのです。アシタカがサンに感情移入していく姿を見た時に感じる「私も何かしなくちゃいけない」という感情こそがもののけ姫最大のメッセージなのかもしれません。

エンタメ娯楽作品としても満点


どう考えても難しく深いテーマが奥底に秘められている本作ですが、ここまでヒットしたということはエンタメ性もバッチリ備わっているということ。
アニメならではの躍動感、一見心地の良いエンディング…。表層的な面を見れば娯楽映画としても完成しきっているんですよね。ストーリーも分かりやすいですし。

奥底まで考察するのも良し、娯楽映画だと割り切って鑑賞するのも良し。楽しみ方にまで隙がありません。

国民的アニメ


何度もテレビで放送されている「もののけ姫」ですが、初回放送時は視聴率35.1%を記録しました。まさに国民的アニメと言えますね。
そして同時にこの作品が国民に愛されているという事実を誇ってもいいのかもしれません。
何度見ても違った形の感動をくれる傑作。この記事を読んで観賞したいと思ってくれれば幸いです。

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