紅の豚をもっと楽しむために!なぜポルコは豚になったのか。徹底考察

「世界一カッコいい豚」と言えば『紅の豚』主人公のポルコ・ロッソで決まりでしょう!
本作をもっと楽しんで観賞するための知識を皆さんに教えたい!

作品解説

宮崎駿の短編漫画を映画化した長編アニメーション。ファシスト党の台頭する1920年代のイタリアを背景に、呪いを受けて“豚”となった中年パイロットの活躍を描く。森山周一郎がシブい声で扮する主人公・ポルコ・ロッソのダンディズムが光る秀作。飛行艇同士によるダイナミックな空中戦や、宮崎自身ファンである各機の細やかな設定も見どころ。

あらすじ

飛行艇を操る空賊が横行していた、第一次大戦後のイタリアはアドリア海。賞金稼ぎの飛行艇乗りであるポルコ・ロッソは、空賊たちには天敵の存在。自分の顔を魔法で豚に変えてしまったポルコを何とかやっつけたいと一計を案じた空賊たちは、アメリカからスゴ腕の飛行艇乗りを呼び寄せ、彼に一騎打ちを迫る…。

設定からは考えられないカッコよさ


『紅の豚』を冷静に分析するとおかしい作品だということに気付きます。
“ジブリで一番オシャレでカッコいい作品”なんてこともよく言われますが、本作の主人公は「豚」です。しかも中年の豚。
どう考えても中年の豚おじさんがカッコよくなるビジョンが見えないのに、主人公、ポルコ・ロッソは突き抜けてオシャレ&ちょい悪&カッコいいです。

見た目は醜いかもしれませんが、終始一貫して「男のカッコよさ」を体現し続けるポルコの姿を見ていると「このおじさんが豚」ということを一切忘れてしまいます。
「豚のくせにカッコいい」のか「豚だからカッコいい」のか。ある意味のギャップ萌えと言えますね。

中年の為の映画?

宮崎駿監督は紅の豚の事を「中年男の為の映画」と言っています。
確かにその意味もよーく分かるんです。いわゆる“クサい台詞”を平気で使いますし、中年が憧れるような雰囲気を目指して制作したという意図はビシビシ伝わります。
ですが、『紅の豚』は間違いなく他のジブリ作品と同じように、全年齢男女関係なく楽しめる作品でもあるのです。

シンプルなテーマ


ジブリ作品に付きまとうのが「難解な考察」です。
例えば
「もののけ姫の真のテーマは自然との共存」

「千と千尋の神隠しのテーマは資本主義経済社会への風刺と警鐘」
などなど“秘められたテーマ”を考えたくなるのがジブリ作品の大きな特徴であり、宮崎駿監督の大きな魅力だと思います。(こじつけぽいのも多いけど)

しかし!『紅の豚』のテーマはたった一つ!

「カッコイイとは、こういうことさ。」

これなんです。この言葉に全てが込められてます。
「男から見たカッコよさ」と「女性から見たカッコよさ」って微妙な差異が生じると思うのですが、紅の豚では両性とも「カッコいい」と思える台詞・演出・音楽がズラリ!

この映画はカッコよくてお洒落だからそれで良いんだ。と納得させられちゃうんです
豚のくせにやるよね!ポルコはさ!

シャレオツすぎなキャラ達


何と言っても登場人物全員がカッコいい!おしゃれ!

情に厚く、女に弱い。去り際には必ずキザな台詞を吐き捨てる主人公、ポルコ
「大人の女」としての理想形を素で行く魅力満載の女、マダム・ジーナ
ポルコに恋心を描き、どこまでも純粋で真っすぐな女子、フィオ
空賊集団「マンマユート団」や無数の荒くれども

 

もう全員が魅力たっぷりなんです。大好きなんです
「こいつは悪者だ!」という明確な敵がいないからこそ、全員の事が好きになっちゃいます。
ポルコと敵対するキャラ達のドタバタ劇も笑って安心して鑑賞出来るのは頭の中で「こいつらも良い奴なんだよなぁ」と補完しているから。


簡単に言うと、作品全体が優しさに包まれているんです。お洒落さと温かさを両立してるんですからそりゃ傑作に決まってますわ。

音楽が良すぎる


ジブリ作品の音楽はどれも一級品なのですが、個人的に紅の豚は飛びぬけて好きな方です。
一番有名であろう加藤登紀子さん歌唱の「時には昔の話を」
エンディングで流れると思わず涙腺が緩んでしまいます。歌詞が良いんですよねえこれまた!

その他にも「セピア色の写真」「アドリアの海へ」「帰らざる日々」など名曲のオンパレードです。
どこかノスタルジックで物哀しい雰囲気を纏っているのが本当に素晴らしい。作品全体に漂うオシャレでカッコいいオーラとの相乗効果で感動が止まりません!

※ここからネタバレ注意!

なぜ豚になったのか


最大の謎である「ポルコが豚になった理由」
結局、最後まで豚になった理由は明かされないまま映画は終わります。まあ個人的には「別に深く考えなくても良いんじゃね?(ハナホジ)」って感じなのですが、折角なので本気で考察してみましょう。

現実への失望


作品解説にも書いているように、「ポルコは呪いをかけられて豚になった」というのが通例です。
呪いというくらいですからポルコが何か悪い事でもしたんだろうなと思ってたんですが、『紅の豚』には呪いをかけるような魔法使いは出てきませんし、そもそも割とリアリズムな作品なのに、豚になった理由だけファンタジー的なのも納得がいきません。

豚になったきっかけとして一番重要な場面は“回想シーン”にあると私は踏んでいます。(多分間違いない)
フィオに語る回想シーンで、第一次世界大戦での空中戦が描かれます。
激戦の末にポルコは一人、雲の平原を滑空していました。すると戦死してしまった仲間たちが飛行艇と共に空へ昇っていき、まるであの世へ続くかのような飛行機雲の列に加わっていくのです。
その中には大の親友であり、ジーナの婚約者でもあったベルリーニも含まれていました…。

一人だけ生き残ってしまったポルコ。彼は絶望します
「もうこんな世界は嫌だ。戦争は嫌だ。人間でいるのに失望した」
彼の深すぎる絶望感と「人間でいたくない」という気持ちがポルコを豚に変えてしまった要因なのではないでしょうか。

ポルコが人間の姿に戻る瞬間を振り返ると

〇フィオが寝ている側で銃弾を触っているとき
〇カーチスの決闘に勝利し、フィオに別れのキスをされたとき(カーチスは「オメエその顔!」と驚いている)

この二度だけ人間に戻ります。
多分ですが、人間に戻るトリガーは「愛する人の為に命を賭ける」ことなのでしょう。
そして愛する人のために戦い、また純粋な愛を受け取ったラストで彼は人間に戻った…。

愛の為に戦い、自らに眠っている絶望感を取り除く。やっぱりかっけえよポルコさん

ポルコ=宮崎駿

メタファーな説なんですが、“ポルコ=宮崎駿”というのも濃厚。というかほぼ間違いなく宮崎駿監督はポルコに自分自身を投影していたでしょう。

当時の宮崎駿監督は自身のイラストを豚人間として書くことが多かったです。さらに監督自身が根っからの戦闘機マニア!こりゃもう間違いない
宮崎駿氏は“反戦への想い”も度々語っていますし、ポルコと言うキャラは監督が憧れる中年の姿そのものだったのかもしれません。

フィオとくっつくというのも大きな証拠で、宮崎駿氏は過去に「ロリコンだと暗に仄めかすような発言」をしています。今の時代では絶対に許されませんね。
ちょっと言葉悪いですが、宮崎駿氏の趣味全開で「反戦!戦闘機!ロリ!」に走った結果が『紅の豚』なのだろうと解釈しています。

宮崎駿が作った“なろう系作品”ってことですわ。何にせよ面白いから良いんですけどね。

いつ見ても面白い

何度も何度も金曜ロードショーやDVDで観賞しているのにも関わらず新鮮なカッコよさを見せてくれる『紅の豚』

「飛ばねぇ豚は、ただの豚だ。」
「マルコ、今にローストポークになっちゃうから。あたし嫌よ、そんなお葬式。」
「徹夜はするな 睡眠不足はいい仕事の敵だ」

こんなに洒落づいたセリフがポンポン出てくるアニメなんてもう出てこないかもしれませんね。やっぱり良い映画だ!!