これぞ芸術。岩井俊二監督のおすすめ映画トップ7

誰しもが抱える浮遊感を計算し尽くされた圧倒的な映像美、繊細なストーリーで表現する映画監督・岩井俊二さん。
多くの作品で唯一無二の世界観を披露し、人々を魅了してきた“岩井作品”ですが、本記事ではおすすめの岩井俊二映画をランキング形式で7作品紹介!
「何か雰囲気が受け付けない」なんて理由で観ないのは勿体なさ過ぎる!

岩井俊二

生年月日:1963年1月24日
出生地:宮城県仙台市
職業:映画監督、脚本家、音楽家


7位 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(1993)

作品概要

「Love Letter」「スワロウテイル」の岩井俊二監督が、フジテレビのドラマ枠『ifもしも』のスペシャル版として製作した、打ち上げ花火を巡って繰り広げられる少年少女の夏の一日を、瑞々しくも郷愁あふれるタッチで綴った作品。

小学生最後の夏休み。その日は学校の登校日で、夜には花火大会が行われる。プールでは典道と祐介が50mを競おうとしていた。そこに、二学期には転校してしまうなずながやってきた……。

少年時代の瑞々しさ

岩井俊二の名を業界内に轟かせた一作です。2017年にはアニメ映画化もされました。

好きな女の子を想って自分の中に駆け巡る様々な感情。少年の頃はその感情の名前すら知りませんでした。
本作では、そんな淡い少年時代の切ない恋心を美しい映像と演出で描いています。“大人になる”ということに憧れていたのに、いざ大人になったときに子ども時代が光って見えるのは何故なんでしょう。

切なくて、ある意味残酷ともいえる現実を岩井俊二監督にしかないセンスで撮られた映像美がエッセンスとなり極上の世界観を構築しています。
色鮮やかな劇中と黒くて静かなスタッフロールのコントラストが素晴らしいです。
上映時間も45分と短く、気軽に観賞できるのもいいですね。


6位 リリィ・シュシュのすべて(2001)

作品概要

ウェブサイト上で展開されたインターネット・インタラクティブ小説から生まれた作品。
中学生になった蓮見雄一は同じクラスの優等生・星野修介と仲良くなる。夏休み、2人はほかの仲間たちと西表島へ旅行に行く。しかし、旅行から戻った星野は変質し、番長を倒し自らその座に収まり、蓮見はいじめの対象になっていく……。

思春期の闇・葛藤・痛み

14歳という最も多感な時期の少年少女が巻き起こすセンセーショナルな少年犯罪。
ストーリーは間違いなく暗いですし、色で言えば“灰色”です。しかし、そんな灰色に染まった少年時代を敢えて綺麗な色彩と映像で描いた「THE・岩井俊二」な作風が魅力的。

本作で描かれるような息苦しい世界に閉じこもった経験を持つ人は少ないでしょう。しかし、一歩間違えば危うい方向に行ってしまいそうなギリギリの精神状態だった14歳という時期をここまでリアルに表現した映画は中々ありません。

何気なく目にした綺麗な風景の裏に潜む狂気・絶望を覗いてしまう感覚は唯一無二の不思議な感覚です。


5位 花とアリス(2004)

作品概要

ショートフィルムとしてウェブで配信されていた岩井俊二監督作品の劇場公開版。恋に揺れる2人の少女、ハナに鈴木杏が、アリスに蒼井優が扮している。

幼なじみのハナ(鈴木杏)とアリス(蒼井優)。ハナは落語研究会に所属する高校生・宮本(郭智博)に一目惚れ。
同じ部活に所属し、なんとか宮本に近づこうとするハナ。そしてある嘘をついたハナは、宮本と急接近する。
しかし、その嘘がバレそうになり、さらに嘘をつくはめに。しかもその嘘がきっかけで宮本がアリスに恋心を抱いてしまい……。

優しい女の子

奇妙な三角関係を描いた青春映画です。
ストーリーだけ読むと少女漫画のようなキラッとしたものに見えなくもないのですが、そんな簡単な言葉では絶対に片付けられない優しくて素敵な作品となっています。

寒くて息が白くなる朝
綺麗な満開の桜
反射が美しい海
全てシーンが綺麗で思わず見入ってしまうこと間違いなしです。

ふとした嘘から始まった不思議な恋愛関係は、覗いている我々に優しさと温かさを提供し、心が浄化されるような気持ちになりました。

演技とは思えないほど自然な表情を見せる主演2人の演技にも注目。見ちゃいけない他人のリアルを覗いている感覚はクセになるはずです。


4位 四月物語(1998)

作品概要

松たか子主演で、上京したばかりの女子学生の日常を優しく瑞々しいタッチで描いた中篇。
桜の花びら舞う4月、大学進学のため、生まれ故郷の北海道・旭川を離れて東京でひとり暮らしを始めた楡野卯月。
彼女にとっては毎日が新鮮な驚きであり、冒険だった……。だが、彼女がこの大学を選んだのには人に言えない“不純な動機”があった……。

春の恋

今や大女優となった松たか子さんの初主演作品。

上京したばかりの女子大生の日常と恋物語を描いているのですが、そこにあざとい演出は一切なし。一人暮らしをしたことがある人ならば「嗚呼、これぞ日常だ」と声が漏れてしまうでしょう。

淡く差し込む光とピアノの旋律が絶妙なバランスで解け合い、独特な切なさを感じさせてくれます。
桜の花びらが雪のように舞い降ちるシーンは圧巻の美しさ。松たか子さんの存在感も相まって映画史に残る屈指の美麗さに仕上がっています。

60分の作品なのに、2人目の主人公が初めて登場するのは40分後。ラスト10分で全ての伏線が回収される様子は鳥肌が止まりませんでした…。
全てのシーン、カットに意味がある珠玉の岩井作品です。


3位 Love Letter(1995)

作品概要

岩井俊二監督の長編デビュー作。
婚約者を亡くした渡辺博子は、忘れられない彼への思いから、彼が昔住んでいた小樽へと手紙を出した。すると、来るはずのない返事が返って来る。
それをきっかけにして、彼と同姓同名で中学時代、彼と同級生だった女性と知り合うことになり……。

100点の美しさ

2人の女性の想い出、恋を淡いタッチで繊細に描いた記念すべき岩井俊二さんの長編デビュー作。

初めて観賞した時は「ラブレター」というタイトルもあって、シンプルな恋愛映画なのかなとと思っていたのですが、そこは岩井俊二さん。見事に期待を裏切ってくれました。
自分が愛した人間の“自分が知らない一面”を探るために記憶と真実を掘り起こしていく日々。
綺麗な思い出を心の中にしまわなくてはならない瞬間は必ず来ます。その過程を丁寧に、時には正論も交えながら描いていく内容は大人になればなるほど響くものになっているはず。

少ない台詞とセンスの良いストリングスのBGMが演出する“岩井美術”は何度見ても痺れること間違いなし。
難しく考えるのではなく、フィーリングで感じる優しさと切なさが詰まった映画です。


2位 スワロウテイル(1996)

作品概要

紙幣偽造のデータを手に入れた娼婦のグリコは、中国系移民のヒョウたちとニセ札造りを始めた。
ライブハウスを買い取り、歌手として有名になっていく彼女だったが……。近未来の架空の都市“円都(イェンタウン)”を舞台に、若者たちの姿を描いた作品。

上手く説明できないけど大好き

私はこの映画が大好きで堪らないのですが「どこが好きなの?」と聞かれると上手く説明できません。映像美、退廃的でありながら美しい世界。など挙げようと思えば挙げられますが、中々どうして「これだ!」という理由は見つからないのです。

「人間の命は平等だ」なんてよく言いますが、果たして本当にそうでしょうか。生まれた時既に命の順位は決められているのではないでしょうか。それは不可抗力な重みを持って確かにこの世にまとわりついている疑問です。

評価が真っ二つに別れるのが当然の映画だと思っています。これを観て「意味が分からない・メッセージ性がない」という意見も理解できますし、それが正解だといっても良いのかもしれません。
しかしそれでも、私はこの作品が愛おしくて大好きで堪らないのです。


1位 リップヴァンウィンクルの花嫁(2016)

作品概要

岩井俊二が黒木華をイメージして制作に取り組んだ作品。
黒木華と綾野剛のほかミュージシャンのCocco、原日出子、地曵豪らが共演している。

東京で派遣教員をしている皆川七海(黒木華)は、鉄也とSNSで知り合った後に結婚。結婚式の代理出席をなんでも屋の安室(綾野剛)に頼む。
しかし、間もなく鉄也の浮気が明るみに。ところが七海が浮気をしたと義母に責められ、家を出ていくことになる。
そんな七海に安室が結婚式の代理出席や、月給100万円の住み込みメイドのアルバイトを紹介。そこでメイド仲間で、型破りで自由な里中真白(Cocco)と出会う。

岩井俊二の到達点

主人公の七海は恐ろしく主体性のない女性。ふとしたきっかけからSNSが引き起こすトラブルに巻き込まれ、ある程度レールに乗っ取って生きていた人生から脱落してしまいます。
普通であれば、この主人子にイライラするところなのに本作では寧ろ逆。心から七海の幸せを願っていました。
七海を演じた黒木華さんの魅力にまんまとやられたってことです。

SNSに翻弄される人物を描いた作品は数あれど、本作のような雰囲気をもった映画は存在しません。

「自分の人生」なんてなかった七海が徐々に道を切り開き、綺麗な光が差し込んでくる展開に優しい笑みを浮かべてしまいました。
黒木華さんだけでなく、謎の男を演じる綾野剛さんや天真爛漫で真っすぐ生きる女・真白を演じるCoccoさんの演技も100点満点。

上映時間は3時間とかなり長いので観るのは根気かもしれませんが、無駄なシーンなどないのです。
これは岩井俊二さんからの「人生に無駄な時間などない」というメッセージなのかもしれません。


最後に

岩井俊二作品を見ると心に綺麗な余韻が残ります。この余韻が欲しいが故に岩井作品を見てるといっても過言ではありません。
2019年には最新作『Last Letter』が公開されるということで、岩井作品の予習・復習をするのをおすすめしておきます!

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