『チワワちゃん』 楽しくて苦しくてロンリーな青春が胸に突き刺さる

豪華若手俳優がキャストに名を連ねた映画『チワワちゃん』。

おしゃれなMV風の映像に隠された若者たちの影。

キラキラしているだけじゃない青春に胸が締め付けられます。

作品概要

「ヘルタースケルター」「リバーズ・エッジ」など、数多くの人気作品を送り出した漫画家の岡崎京子が94年に発表した「チワワちゃん」を実写映画化。

遺体で発見された女性の遊び仲間たちが、今まで知らなかった彼女の素性に迫る。

監督は、自主映画「SLUM-POLIS」などで注目され、「THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ」で商業デビューした弱冠27歳の新鋭・二宮健。

あらすじ

東京の街でつるんでは、青春を満喫していたある若者グループのマスコット的存在だったチワワ(吉田志織)が、東京湾でバラバラ遺体となって発見される。

元恋人のヨシダ(成田凌)、親友だったユミ(玉城ティナ)、チワワが好きだったナガイ(村上虹郎)ら残された仲間でチワワのことを語り合うが、誰も彼女の本名や素性を知らないことに気づく。

※ネタバレあり

MV風の演出

物語は、チワワちゃんの“死”から始まります。

マスコット的存在で親しまれていたチワワちゃんが、バラバラ遺体となって東京湾で発見されるという暗く悲惨な幕開け。

そこから、チワワちゃんのことを回想していくという流れです。

飲んで、踊って、バカ騒ぎをして……

序盤の雰囲気から一転。

煌びやかな照明の下で遊び狂う登場人物たちの映像が、アップテンポの音楽に合わせて目まぐるしく展開していきます。

グループの中心で、はじけそうな笑顔を見せるチワワちゃん。

でも、そんなチワワちゃんはもういない。

MV風の映像によって、20代前半ならではの高揚感とエネルギーが伝わってくるとともに、不安定さ、そして喪失感も感じさせられます。

“無意味”と捉えられてもおかしくないようなシーンですが、私にとってはとても印象深く、大事なシーンのように思えました。

誰も何も知らない関係性

たくさん遊んで、最高に楽しい時間を一緒に過ごしたチワワちゃん。

しかし仲間たちは、彼女の本名すら知らなかった。

そんな“うわべだけの関係”である彼女たちには、観ているこちらもドキリとさせられます。

私自身、遊びの場で出会った仲間たちはいますが、それぞれの素性はあまりよく知りません。

さすがに本名くらいはわかりますが……。

多くの時間を共に過ごしてきたはずなのに、実は何も知らない。

これは、現代を生きる多くの人に当てはまることだと思います。

充実しているうちはいいものの、輝かしい時間が過ぎると空っぽになってしまう。

劇中のチワワちゃんが自分自身と重なり、胸が締め付けられました。

魅力的な若手俳優たち

『チワワちゃん』で目を引くのは、豪華若手俳優の名前がずらりと揃っていること。

門脇麦さん、成田凌さん、寛一郎さん、玉城ティナさんといった、今を輝く俳優陣が集結しているのです。

そして驚くべきことに、全員がハマり役!

それぞれの魅力を最大限に発揮した好演ぶりを堪能できます。

吉田志織

人気の若手俳優が揃う中、物語の中心人物であるチワワちゃん役を演じたのはオーディションで大抜擢された吉田志織さん。

彼女の“チワワちゃん”としての存在感は抜群でした。

すらりと伸びた長い手足、思いきりのいい行動力、天真爛漫で何をするにしても可愛らしい彼女は、女性から見てもとても魅力的。

「次はどんな表情を見せるのか?」と、思わず画面の中のチワワちゃんに引き込まれてしまいます。

門脇麦

圧倒的な輝きを放つチワワちゃんと対峙して描かれているのが、門脇麦さん演じるミキ。

自分の元カレ・ヨシダと付き合いだしたチワワに、初めのうちは嫉妬心を露わにするのですが、彼女には勝てないと思った途端あっさりと敗北宣言。

逆に、誰よりもチワワちゃんに寄り添うようになっていくのです。

チワワちゃんが天真爛漫に踊り、笑う姿を見つめる門脇麦さんの、少し陰を含んだ瞳が印象的です。

成田凌

ヨシダ役を演じる成田凌さんのイライラするほどの軽薄さも素晴らしい。

成田凌さんって、作品によって全く雰囲気が違いますよね。

ただ、今回の役は怖いくらい似合っていました。まさにハマり役!

実は、原作にはほとんど登場しないヨシダ。

台詞は決して多いわけではありませんが、その分行動ひとつひとつに注目して観ていただきたいです。

チワワちゃんを通して自分を見つめなおす

楽しくて苦しくて自由だけど辛くて、もう滅茶苦茶だけどキラキラした20歳前後の青春時代を思い出しました。

今、登場人物たちのように青春を謳歌している方にも、過去に青春時代を過ごした方にも少なからず共感できる部分があるでしょう。

フワフワと展開していくようで、観終わった後には心に鋭く何かが引っかかる。そんな作品です。