レビュー

『ここは退屈迎えに来て』感想 素晴らしい青春群像劇だった

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山内マリコ原作の人気小説を原作にしたヒューマンドラマとして注目されている『ここは退屈迎えに来て』
東京から帰郷した27歳の女性主人公を中心にした登場人物たちが「自分の居場所」を見出そうともがく姿を描いています。

あらすじ

27歳の“私”(橋本愛)は、10年ぶりに東京から故郷に戻ってきた。実家に住みながらフリーライターとしてタウン誌の記事を書いて生計を立てるが、親にはフリーターのようにしか思ってもらえない。ある日、再会した高校時代の友人と、サッカー部のエースで憧れの存在だった椎名くん(成田凌)の話題になり、彼に会いに行くことになる。一方、東京に畏怖を抱くあまりに地元から出られずにいる椎名の元恋人の“あたし”(門脇麦)は、彼と過ごした青春時代の思い出が脳裏に焼き付いていて......。

帰郷した意味


本作の主人公は東京で働いていたのにも関わらず、わざわざ田舎の地元に帰ってきます。
そのことを「逃げた」と取るのか「よく頑張ったね。おかえり」と取ってあげるのか。それは人それぞれです。
きっと主人公と同じような境遇の人や「そろそろ帰りたいな」と考えている人も沢山いるはず。
特に20代半ば~後半の人にとっては、主人公の気持ちが痛いほど伝わり感情移入してしまうでしょう。
実際、主人公と同じ年齢層である私は冒頭から引き込まれてしまいました。

「椎名くん」


本作の中心人物は間違いなく「椎名くん(成田凌)」です。
椎名くんを巡る青春群像劇と言っても良いでしょう。タイトルを「椎名くんと私達」にしても何ら違和感はありません。

そして、この椎名くんは主人公と高校の同級生であり、学校の中心人物だった存在。今でいう「陽キャラ」ってやつですかね。しかも嫌みのない心からのイケメン!
「あ~こういう男いたな~」なんて思いながら椎名くんとの思い出をキャラと共に振り返っていくことになります。

門脇麦演じる「あたし」


主人公は「私」で門脇麦演じるキャラが「あたし」です。(ややこしい!)
この「あたし」こそが椎名くんと高校時代に付き合っていた女性であり、10年たった今でも椎名くんを忘れられないある意味かわいそうな女性でもあります。

椎名くんへの想いを忘れられないまま、高校の同級生だった男と肉体関係を結び続けるモラトリアムな毎日…。
再び椎名くんに想いを伝えようにも踏み出せず、そんな自分に嫌気がさして地元を飛び出そうにも「東京への畏怖」から抜け出せない「あたし」

こうやって文字だけで見てみると相当なメンヘラ臭がしますね…笑
でもどこか共感してしまうのも上手い設定。というか門脇麦の演技力が凄まじかったです。映画で見るたびにエッチなことしてる気がするけど

登場人物が多い!!


一応主人公は橋本愛演じる「私」ということになっているのですが、この映画そんなに単純じゃないんです。
言ってしまえば出てくる登場人物全員が主人公と言っても良いくらいのもの。
ということで整理してみました。

・「何者かになりたかった」私(橋本愛)
・私の高校時代の親友・サツキ(柳ゆり菜)
・私と仕事をともにするカメラマン・須賀(村上淳)

・椎名くんをわすれられない「あたし(門脇麦)」
・あたしのセフレ的存在の遠藤(亀田侑樹)

・椎名くんの妹・朝子(木崎絹子)
・朝子の家庭教師・まなみ先生(瀧内公美)

・椎名くんの妻・山下南(岸井ゆきの)
・南が憧れる女子高生モデル・あかね(内田理央)

・椎名くんのことが好きな新保くん(渡辺大知(By 黒猫チェルシー))

・援交をまがいのことをしているなっちゃん(片山友希)
・なっちゃんの援交相手&あかねの見合い相手・皆川(マキタスポーツ)

これが主要メンバーです。……多い!!!

この人物相関図がある種のミステリー的要素も含んでいるので、決して無視は出来ないのですが、それでも多い。
どんな人物相関図になっているのかを予習してから観に行くのも全然ありだと思います。逆に前情報ほぼなしで観に行くのは少し危険かも…。

くすぶった「今」と輝いていた「昔」

皆さんは学生の頃を思い出すとどんな気持ちになるでしょう?
放課後のガランとした教室、吹奏楽の音が響き渡る校内…。授業でふざけ合い先生に怒られた日々…。もう戻ってこないんですあの日々は。
だからこそ我々は昔に憧憬を感じ、戻りたいと思ってしまう。そしてそれは本作の人物たちも一緒。

椎名くんに会いに行こうと車の中で友達と思い出を振り返るシーン。そこに全てが凝縮されています。「ゴールじゃなくて過程が楽しかったんだ」と気付いてしまうとき、途端に「今」がくすぶって見える。

椎名くんとの思い出であるプールで遊ぶシーンだけでノスタルジー100%です。絶頂です。

絶妙なラインの映画

この映画は響く人と響かない人でキッパリ分かれるかもしれません。
それこそ主人公と同じように、上京したが地元にも帰りたいという感情を持っている人ならスッと心に染み入る作品になるでしょう。
しかし逆を言えば、共感できない人ならば最初から最後まで退屈な雰囲気映画に成り下がります。

良くも悪くも雰囲気と役者陣の演技力で保っているような作品なので、あらすじや予告編をみてグッと琴線に触れたのであれば観賞して損はないでしょう!
私は相関図を頭に入れた状態でもう一度最初から観てみたいと思います。

ちなみに橋本愛史上ナンバーワンの美しさです。間違いありません。

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