『ビブリア古書堂の事件手帖』感想 ミステリーとして楽しむ映画ではない

大人気小説『ビブリア古書堂の事件手帖シリーズ』の実写映画化ということで注目を浴びている本作
人気ミステリーということで実写化に対して不安な声も上がっていますが、一体どんな映画だったのか。徹底レビュー!

※ネタバレなし!

あらすじ

北鎌倉にある古書店「ビブリア古書堂」。夏目漱石の直筆と推察される署名入りの「それから」を持ち込んだ五浦大輔(野村周平)は、持ち主である亡き祖母の秘密を解き明かした店主・篠川栞子(黒木華)の推理力に驚く。その後栞子を手伝うことになった大輔は、彼女が所有する太宰治の「晩年」の希少本が、「人間失格」の主人公と同じ「大庭葉蔵」を名乗る人物に狙われていることを知る。

原作は未読

ちなみに私は原作をほぼ知りません。「名前は知ってるけど読んだことないな」という感じです。
何となくミステリー小説なんだという認識だけはありましたが、中身についてはほぼ知らず…。
過去に剛力彩芽さん主演でドラマ化をして世間から物凄く叩かれたというイメージだけはずっと残ってます。

終始落ち着いた雰囲気

ミステリーと名は売っていますが、全く違います!いや全くというのは言い過ぎかもしれませんが、“本格ミステリー”とは程遠い内容でした。スリリングな展開を期待している人にとっては物足りないかも…。

しかし、その分本作は最初から最後まで落ち着いています。古書堂の雰囲気も相まってノスタルジックな恋愛映画という表現の方がしっくりくるかもしれません
ここで不思議に思ったのが「原作のことリスペクトしてるんだろうな~」という想いがよぎったこと。
前述しましたが、私は原作を読んでいません。それなのに制作側からの「原作愛」をビシビシ感じたんです。いや~これは凄い。

原作付き映画のよくあるパターンが「詰め込み過ぎて展開が急になっている」という点
あまりに詰め込み過ぎて展開がギュウギュウ詰めになると、原作ファンも未読の鑑賞者も双方から不信を買ってしまいますからね。
その点からも『ビブリア古書堂』は安心して鑑賞できる映画ということだけは保証します

美しい人間模様

もうとにかく人間模様の描き方が綺麗です。登場人物が少ないのが逆に分かりやすさを演出していました。台詞を読むテンポもゆっくりめなので展開に迷うことはほぼないでしょう。

私が特に気に入ったのが“過去パート”の映像の美しさ…。
過去パートで切ない恋模様が描かれるのですが、セピア色の哀しく儚い情景は本当に溜め息が出るほど綺麗でした。

「古書を愛する」という共通点の元に繋がった、一見何の繋がりもない人たちが織りなす物語。でも実は古書を通して不思議な縁で結ばれていたことが徐々に分かっていくんです。
「涙が出るほど感動!」という映画ではないですが、静かにジンワリと広がっていく感動をくれます。

単調で起伏がない

最初の方でも書きましたが、本作はずっと落ち着いたテンポで進行していきます。
この淡々とした雰囲気が最大の魅力でもあり、最大の弱点にもなっているのです。誰にでも分かるような盛り上がり・緩急のつけ方もほぼなく、肩透かし感を喰らう人も少なくないでしょう。

唯一と言っていいスリリング風なシーンもあるのですが、そこまで驚きを感じられるものでもありません。
ミステリー映画ではなく、ノスタルジーな恋愛映画という認識で観賞することをおすすめします。

私は静かで落ち着いた雰囲気が好きなので最初から引き込まれていましたが、ここら辺は結構評価が分かれるかもしれませんね。

役者陣の素晴らしい演技

 

静かな映画で一番重要になるのが役者の演技力。
大げさな演出や音楽で誤魔化せないからこそ、鑑賞者を引き込ませる演技力が相当大事なスパイスになるのですが、本作は演技にケチのつけようがありません!

憂いを含んだ佇まいをする東出昌大さん、尊い‥。
叶わぬ恋に揺れる女性を演じる夏帆さん、キレイだ…
まるで役が憑依したような演技をする野村周平さん、すごく自然
そして主役として静かながらも確かな存在感と奥ゆかしさを放っていた黒木華さん、ホント好き。

その他、成田凌さん、渡辺美佐子さん、神野三鈴さん、酒向芳さんの演技も敢えて抑えた落ち着いた演技をしていてとても好感でした。拍手

総評

読書の秋に見るには最高の映画だと思いました。特に読書家の人にとっては心に響く内容であることは間違いなしです。
ロケ地である鎌倉の街並み、丁寧に作られた美術セット、そしてエンドロールに流れる「北鎌倉の思い出」
いやー、とにかく素敵で心に良い後味をくれる映画です。気になっているのならぜひ鑑賞してみては?