『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』感想 実験的で哲学的な雰囲気に酔いしれよう

 

事故死した男が幽霊になり、取り残された妻を見守るというファンタジーな物語が話題となっている『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』
予想通り、心で感じる哲学的な映画でした。

あらすじ

若夫婦のC(ケイシー・アフレック)とM(ルーニー・マーラ)は田舎町の小さな家で幸せに暮らしていたが、ある日Cが交通事故で急死してしまう。
病院で夫の遺体を確認したMは遺体にシーツをかぶせてその場を後にするが、死んだはずのCはシーツをかぶった状態で起き上がり、Mと暮らしていたわが家へ向かう。
幽霊になったCは、自分の存在に気付かず悲しみに暮れるMを見守り続ける。


斬新とチープの絶妙なライン

今作の主人公は幽霊。特筆すべきはそのビジュアルでしょう。
なんせシーツを被ってるだけです。イマドキ幽霊を表現するのに“人型”じゃない造形を選んだことに賛辞を送りたい。
一歩間違えばチープな印象になり、物語に没入できなくなりそうですが、今作では音楽やカメラワークのおかげもあって“安っぽさ”は限りなくゼロ。
逆に斬新でスタイリッシュに見えてくるのですから、これは完全に制作陣の勝ちでしょう。

ほぼ無音の世界

 

幽霊として静かに家を見守ることを表現するために、今作では無音&長回しのシーンが非常に多いです。
ストーリー・設定を考えれば、静かなのは当然ですし、雰囲気作りのためにも必要な演出である事は否定しません。むしろ私は好きな部類でした。が、ここは好みが別れるところでしょうね…。
「退屈だ。」と切り捨てられても仕方ないかも。
こっちの感性を試してくる挑戦的な態度をビシビシ感じました。

ただ単に見守るだけではない

序盤は不安でした。
「これひょっとして幽霊がボーっと妻を見守るだけで終わるんじゃないの…?」と
しかし、そんな不安も何のその。しっかりと映画としての見せ場が存在します。

あるタイミングから幽霊が時間を超越するようになるのですが、結構凄いことになりました。
観客は「このままいったら幽霊がどんどん増えるよね!?」と不安・期待と抱くはず。そしてその予想を“裏切らず”にしっかりと増殖してくれるんです。
予想を裏切ってほしくない部分だったので、ここは素直に安心しました。ありがとう監督。

意外とシンプルなテーマ

一見、深くて哲学を語りたくなる内容に思えるのですが、今作に秘められているテーマはシンプルです。
「喪失感を持って生き続けるのでなく、何かを追い続けて目的を持って生きることにこそ人生の意味がある。」
ということだと思います。

詩的で哲学的な語り口から放たれる台詞の数々は全てが抽象的ですし、説明も全くありません。でも、“何か大事なことを訴えかけている”ということは伝わるはず。

一つ、観客がどうしてもどうしても知りたいであろう部分が最後まで明かされずに終わるのですが、不思議とモヤモヤはなかった。
想像力を掻き立ててくれるグッドな演出だったと思います。

唯一無二な感覚

ラブストーリーでもあり、哲学的な映画でもあり、ある種のホラーでもある…。
繊細で静かな雰囲気は誰でも好きになれるものではないでしょう。
しかし、人を失う表現を斬新で儚く表した今作は一見の価値ありです。

誰かが亡くなったとき、「失った」と感じるのは残された者だけではない。亡くなった方も「失ってしまった」と感じているのです。

不気味な気分にさせる4:3の画面比率なども相まって唯一無二の存在感を放った妙作となっております。予告を見て少しでも気になったなら是非チェックしてみてください。
(ルーニー・マーラが本当キレイでした)


予告編