感動ドキュメンタリー『いろとりどりの親子』感想 本作を観ないのは余りに勿体ない

24か国で翻訳された世界的ベストセラーを実写映画化した『いろとりどりの親子』
LGBT、身体障がい、発達障がいなど、様々な“違い”を抱える子どもとその親にフォーカスを当てた本作。
この感動作を観ずに終わるのは勿体なさ過ぎる。

作品解説

アンドリュー・ソロモンのノンフィクション小説『FAR FROM THE TREE』を原作とする、困難と向き合う親子たちにカメラを向けたドキュメンタリー。
自閉症、ダウン症、LGBTなど人とは違う個性のある子供を持つ6組の喜怒哀楽を描写する。監督を務めるのは、主にドキュメンタリー作品を手掛けてきたレイチェル・ドレッツィン。音楽を『ライフ・イズ・ベースボール』などのヨ・ラ・テンゴと作曲家のニコ・ミューリーが担当する。

あらすじ

ノンフィクション作家のアンドリュー・ソロモンは、10年の歳月を費やしておよそ300組の親子に取材を試みる。
親とも周囲の子供たちとも異なる性質を持った子供と、その両親へのインタビューをまとめた本は世界24か国で翻訳される。その著書に基づいて、レイチェル・ドレッツィン監督が6組の親子の日常を映し出す。

気付かされる“違い”

『いろとりどりの親子』で紹介される親子は計6組。それぞれが違う問題を抱えて過ごしています。
ダウン症、自閉症、同性愛、そして殺人を犯した子ども…。
改めて“色々な人がいるな”と思いました。障がいを持った人と触れ合ったことはあるものの、家族として向き合った経験はありません。
「他人と家族の違い」がここまで明確に示され、そしてここまで大きいものだとは…。
分かりやすいマイノリティにいる人達の苦悩、それを受け入れ生きていくことの明るさ。色々なことを教えてくれる映画です。

淡々と描く哀しみ

私が特に注目したのは、殺人を犯した子どもを持つ家族を取り上げた点です。
ダウン症や自閉症は言ってしまえば、分かりやすく“同情”しやすい違いでしょう。(同情することの良し悪しは置いておいて)
差別意識が残ってる問題ではあるものの、世間一般的に言えば“優しく扱われる人達”。

しかし、殺人を犯した人間を上記の人々と一色担に考えることは出来ません。どうしたって被害者側の気持ちに立ってしまいますし、殺人を犯したことを擁護などできない。

この映画では、殺人を犯した子どもの姿を警察署で見た両親が登場します。
「信じられない。息子がそんな事するわけがない。」と言いながら、息子の顔をみるなり“認めたくない現実”を受け入れざるを得ない両親の姿が胸を打ちました。
ドキュメンタリーなので余計なBGMも演出も一切ありません。ただ淡々に親の悲しみを描き出すその映像が伝えたい感情とは一体何なのか。
リアル過ぎる哀しみを目にした時、そこに正解のリアクションは存在しません。観賞した人それぞれが違う“何か”を感じるでしょう。

監督コメント

――原作は900ページに及ぶ大作だが、映画に取り上げる家族を選んだ基準は?

レイチェル・ドレッツィン監督(以下ドレッツィン)

映画では6つの家族を取り上げました。原作には300以上の家族が登場します。実は原作と映画両方に登場する家族はダウン症のジェイソンの家族だけです。アンドリュー・ソロモンは原作を10年かけて執筆していて、本に登場する家族のエピソードはある程度完結しています。私は映画にするなら、現在進行系のものにしたいと思ったので、新たに家族を探しました。例えば、低身長症の夫婦のジョセフとリアは子どもが欲しいと考えていたので、彼らが子どもを授かる過程を撮れると考えたんです。

製作は、自閉症やダウン症など、どのアイデンティティを映画で取り上げるかを検討することからはじめました。それぞれのエピソードが響き合うかどうかを考えて選んでいます。それから、それぞれの家族は人生の意義をそれぞれに見出して自ら選択して人生を送っています。それも重要な基準となっています。

――殺人を犯した少年を持つリース家という家族を映画に出演させた経緯、理由は何なのでしょうか。

ドレッツィン

リース家の出演交渉は特に大変なものでした。何度もお会いして、長い時間をかけてようやく彼らの気持ちを聞かせてもらえるようになりました。こうした時、人は彼らを(出演するように)説得しようとするでしょうが、これは奇妙なことだと私は思います。私たちは、彼らを説得しようとは思いませんでした。できることと言えば、彼らが決断してくれるのを忍耐強く待つことだけです。

この犯罪者の子どもを持つ家族というセクションは、他のセクションよりも候補となる家族は非常に少なかったです。単純に参加意思のある家族がまず少ないですし、白人の家族にしようと思っていました。というのも、アメリカでは残念ながら犯罪と黒人を結びつける偏見が存在します。もし、このセクションに黒人家族を採用したら偏見を助長してしまう可能性がありますから。

リース家の出演を希望した最も大きな理由は、彼らがアンドリューの本を読み、手紙を送っていたことです。その手紙の内容が素晴らしく、この映画のテーマに関わる部分がたくさんあったのです。だからこそ、彼らのエピソードがこの映画には必要だと思いました。

違いを受け入れるとは

生きているうえで自分とは違う種類の人間と関わることはいくらでもあります。しかし、我々は自然と目を背けているのではないでしょうか。
“違い”を受け入れているつもりでも、自分にとって都合の悪い違いからは逃げていたと私は感じます。
多様性が叫ばれる時代だからこそ、今一度自分と周りの環境に目を向けて生きていくことが求められているのでしょう。

多くの事について考えさせられる素晴らしいドキュメンタリー映画『いろとりどりの親子』
子どもがいる人も、いない人にも、きっと心に何かを残す傑作です。