なぜ『ボヘミアン・ラプソディ』は大ヒットしているのか

公開されて以降、右肩上がりに興行収入を伸ばしている映画『ボヘミアン・ラプソディ』
伝説のロックバンド・Queenを題材にした伝記映画ですが、Queenのファンではない人、あるいはほぼ知らないという人をも虜にしている本作。
一体何がここまで人々を魅了しているのか。考えてみました

※ネタバレあります!

ボヘミアン・ ラプソディ

解説

「伝説のチャンピオン」「ウィ・ウィル・ロック・ユー」といった数々の名曲で知られるロックバンド、クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーの伝記ドラマ。華々しい軌跡の裏の知られざる真実を映す。

あらすじ

1970年のロンドン。ルックスや複雑な出自に劣等感を抱くフレディ・マーキュリーは、ボーカルが脱退したというブライアン・メイとロジャー・テイラーのバンドに自分を売り込む。
類いまれな歌声に心を奪われた二人は彼をバンドに迎え、さらにジョン・ディーコンも加わってクイーンとして活動する。
やがて「キラー・クイーン」のヒットによってスターダムにのし上がるが、フレディはスキャンダル報道やメンバーとの衝突に苦しむ。

キャスト・スタッフ

フレディ・マーキュリー-ラミ・マレック
メアリー・オースティン – ルーシー・ボイントン
ブライアン・メイ – グウィリム・リー
ロジャー・テイラー – ベン・ハーディ

監督:ブライアン・シンガー
脚本:アンソニー・マクカーテン


シンプルで共感しやすい展開

本作が大ヒットしている理由の大きな要因に「にわか層の取り込み」が挙げられます。
にわかというと何だか悪いイメージを持たれそうですが、全くマイナスの意味はありません。
Queenのことなんて全然知らないという人達でも感動し、また見たいと思えるパワーを秘めているのです。(私も本作を観るまでQueenのことはほぼ知りませんでした)

本作の概要をザっとまとめると

フレディ・マーキュリーがQueenを結成し、様々なトラブルに見舞われながらも、何とか乗り越えて大スターへと駆け上がっていく。
エイズを発症し、死期が迫っていることを悟りながらも彼は最後のライブ「ライヴ・エイド」で圧巻のフィナーレを迎えるのであった…

こんな感じになります。また、本作では映画的に盛り上げるため史実とは異なる順番で物事を見せたり、脚色を施しており、一部のコアなQueenファンは若干ご立腹な様子(別に映画だから良いじゃない…)

文章だけで説明すると尚更分かりますが、言ってしまえば“超王道”なつくり!
しかし、その分苦しむ描写、盛り上がる描写がハッキリしているので安心して映画に身を任せられます。
小難しい考察とかしなんかいらないんです。スクリーンで躍動するQueenを楽しめられればそれでいい!
このシンプルさ、分かりやすさがヒットしている要因の一つだと思います。

苦悩の描き方

物語は苦労するシーンが多いほど、キャラが報われたときの感動も大きくなります。と言ってもこのバランスが非常に難しいのですが…。
その点、本作はフレディが抱えている“闇”の描き方が絶妙なバランスでした。

苦悩その1:恋人との別れ

Queenの名前が世界的に認知され始めた時、自分が性的マイノリティだと認識するフレディ。女性の恋人がいるのにも関わらず、通り過ぎていく男性に目を奪われてしまうシーンから「フレディの苦悩」が始まっていきます。

恋人のメアリーとライブ映像を一緒に観賞し、喜びを語るフレディ。ですがメアリーは何故か神妙な面持ち
「私に何か隠しているでしょ」
と突然フレディに詰め寄るメアリー。自分の性的嗜好に気付いていたフレディは
「僕はバイセクシャルだ」
と答えます。しかし、メアリーが返した言葉は
「あなたはゲイよ!」
という核心を突いた辛辣なものでした。

離婚を迫るメアリーを必死に止めようとするフレディでしたが、時すでに遅し。

フレディの決して拭えない孤独感が画面全体を覆っていきました。

全米ツアーも成功し、順風満帆だと安心していたのにこの急転直下ぷり
否が応でも観客はフレディに同情し、心が大きく揺さぶられます。

苦悩その2:バンドメンバーとの亀裂

それまでロン毛で派手な衣装と「THE・ロックスター」な風貌をしていたフレディですが、急に髪の毛を角刈りにし、衣装もタンクトップという「急にどうしたお前!?」言わざるを得ないビジュアルになりました。
バンドメンバーからは「何だかゲイみたいだ」と指摘され、さらには当時バンドのマネージャーだったポール・プレンターと親密な関係になっていくという展開に…

ポールと親密な関係になればなるほど、バンドメンバーとの仲も微妙なものになっていく。
挙句の果てにはポールに連れられてゲイコミュニティ(日本で言うハッテン場)に入り浸り、スタジオ録音に遅刻してくる始末です。

ついにフレディは「俺には誰も必要ない」と言ってバンドメンバーを突き放し、ソロデビューすると言い出します。
当然メンバーは大激怒!バンド“Queen”は決裂し、それぞれの道を歩むのでした…。

人生山あり谷ありとは言いますが、こんなに転落していく男も珍しいんじゃないでしょうか。新進気鋭のロックスターから一転、フレディの孤独と闇を目の当たりにした観客は全員思っていたはず。「早くQueenを復活させてライブをしてくれ」と

そして伝説へ…

20世紀最大のチャリティーコンサート「ライヴエイド」の存在を知ったフレディはすぐさまQueenメンバーの元へ
「俺がクソ野郎だった」と素直に謝るシーンには感動を隠し切れませんでした。

しかし、この時点でエイズが発症しているフレディは明らかに体調がおかしい様子。
迷いながらもメンバーに自分がエイズであることを告白します。

「ただ、このことで僕を哀れんだり、怒ったり、僕を退屈させるのは時間の無駄だ。何があってもステージに立つ。そのために生まれてきた。それがフレディ・マーキュリーだ」

こんなにカッコいいヴォーカリストいない!そう確信した瞬間でした

そしてお待ちかね!20分に渡るライブシーンが始まるのです。
ここまでフレディの人生を追体験している視聴者は無条件に感動して当然でしょう。あんなに苦労した男が、いまステージに立って熱唱して伝説を作っている。
この事実に我々はすっかり心を奪われ、魅了されているのです。

まとめ

『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒットし、高評価を得ている理由は決して一つだけではなく、複合的なものです。
単純にストーリーが胸アツで響いた人
フレディの生い立ちに共感して感動した人
Queenの楽曲から溢れ出るパワーにノックアウトされた人

色んな要素が混じり合い、大傑作となっているのが『ボヘミアン・ラプソディ』なのでしょう。

凄く個人的な理由を挙げれば、大スターというイメージしかなかったフレディ・マーキュリーの闇の部分を隠さず描写してくれたのが私の琴線に響きました。
Queenブームを巻き起こしている本作ですが、一体どこまでブームは続くのか!非常に楽しみで仕方りません。