『ドラゴンボール超 ブロリー』感想 「これを待っていた!」と心から言える出来栄え

ファンからの期待も高い『ドラゴンボール超 ブロリー』
これまでのドラゴンボール映画から想像するに単なるファンムービーではないかと心配していたが、そんな不安など吹き飛ばしてくれる素晴らしいパワーを持った作品だった。
声高らかに『傑作!』と言い切って問題はない出来だろう。

作品解説

国内外で人気の高い鳥山明のコミックを原作とする劇場版アニメーションの第20弾。
地球育ちのサイヤ人・孫悟空、サイヤ人の王子・ベジータ、伝説のサイヤ人のブロリーらの出会いや、フリーザ軍とサイヤ人の歴史が映される。
鳥山が脚本とキャラクターデザインを担当

あらすじ

孫悟空は「力の大会」が終わった後も、自身の能力を高めるために修行に精を出していた。ある日、悟空とベジータの前にほぼ全滅したはずのサイヤ人ブロリーが現れる。
異なる道を歩んできた三人のサイヤ人が地球で出会い、さらに悟空へのリベンジをもくろむフリーザも巻き込んだ闘いが始まる。

丁寧な前振り

本作で一番評価できる点はストーリーへの引き込み方にある
原作が連載され、アニメも人気を博していた1980年代~90年代の空気を再現するため、冒頭15分ほどのシーンを回想シーンとし、大人の原作ファンから子どもまで世界観に“慣れさせる努力”をしているのだ。

特に懐かしいキャラ達の登場は、ドラゴンボールファン全員が感動すること間違いなしだろう
コルド大王、子ども時代のラディッツ、そして悟空の親であるバーダックやその家族のバックボーンなど、否が応でも見入ってしまう展開・演出がテンコ盛りなのだ。
各キャラの人間味、そして“悲劇の人物”としての描かれ方は文句のつけようがないだろう。満点に近い冒頭の作り方だと感じる

設定改編

冒頭の回想シーンでは、原作から大胆な設定改編もなされている。
悟空、ベジータ、ブロリーの3人超サイヤ人候補の親たちが織り成す人間ドラマは重厚で見応えがあると同時に、キャラの性格が気になってしまう人がいるかもしれない

悟空の父親であるバーダックはフリーザによる危機を察知し、息子の安全を第一に考えて悟空一人をポッドで地球に送り込む。
“バーダック=勇ましく熱い男”という観念を持っていた私は、この優しくてマイルドな性格へと変更されたバーダックに当初違和感を抱いたが、冷静に“親としての自覚”を考えれば当然の改変だろう。
むしろ「戦闘民族=ただの戦闘狂」という古臭い固定概念を持っていたのは私の方だったのだと考えさせられた

安心の全年齢向け

ドラゴンボールと言えば、日本で一番人気の漫画と言っても過言ではない。連載時期を考えると、当然大人のファンが多いと思いがちだが、ドラゴンボールという作品は度々“リバイバルブーム”が訪れており、今やファン層は全年齢向けと言って良いだろう。

ファン層が全年齢ということは、シリアスで重い物語にし過ぎても、軽くてユーモアたっぷり過ぎてもダメなのだ。
その点、『ドラゴンボール超 ブロリー』では、非常にバランスよくギャグシーンが織り込まれている
本作では久しぶりにフリーザもドラゴンボール争奪戦に加わっている。ファンからすると、これだけでも嬉しくて仕方ないのだが、なんとフリーザがドラゴンボールを争奪する相手はブルマなのだ!
この両者が実にしょうもない願い事を叶えるために奔走するシーンは、まさに“鳥山明にしか書けないギャグ”だろう
大人への擦り寄りだけでなく、きっちりと子どもにも分かりやすい要素を取り入れたことは評価するべきポイントだ

ブロリー

本作のブロリーの描き方には期待がかかっていた。なんせ原作者の鳥山明氏が自らブロリーの内面・背景を書き上げたからだ。
その結果、彼は驚くほど悲劇的で同情したくなるキャラクターへと変貌していた

パラガスによって発見されたブロリーは一切の娯楽を禁止され、ベジータ王への復讐の為だけに戦闘マシーンとして育てられる。さらに、怒りが爆発して暴走状態に陥ると首輪が反応してパワーが抑えつけられる描写もまるで奴隷のような主従関係で痛々しい。
このように、ブロリーの過去は観ているだけで胸が締め付けられること必至だろう

このブロリーのように何でも禁止された状況に共感できる人は少ないだろうが、同情できる人は数多くいるはず。
一見やり過ぎなように見えるブロリーのバックボーンづくりだが、観客に感情移入させるという観点で見れば、至極真っ当なやり方をしていると取れる。
この人間ドラマを『ドラゴンボール』という絶対的な世界観を崩さずに取り入れた力量には拍手せざるを得ない。

圧倒的な作画力

一言で言うなら「最高」これ以外に形容する言葉はない。
とにかくヌルヌル動くバトルシーンは圧巻する他なく、ドラゴンボール以外、全てのアニメ映画と比較しても、作画のレベルはトップクラスだと言える
テンポが良いだけでなく、カット割りやポーズにまで拘り、観客を一切飽きさせないぞという気概を感じることが出来た。
がしかし、プロレスのようなMCボイスは必要だったであろうか?最初のうちは興奮する要素として機能していたが、正直最後の方は興ざめし、うるさいとしか思えなかった。

不満点

前半はとても丁寧にドラマを展開し、ゆっくりと確実に観客を虜にしていた本作だが、後半特にバトルシーンがメインになると、ストーリー的な失速感が否めない。
王道な展開と言うには少しお粗末かもと思ってしまったが、お祭り映画として楽しめば許容範囲ではある

あっさりとブロリーの強さを認め、気付いたらゴジータになっているように見えたのが不満ではある。しかし画面上でゴジータが戦っている姿を見れば細かい不満など全て忘れしまうからズルい

最後に

前作『復活のF』では、破綻した脚本・ストーリーに参っていたが、本作で堂々と“ドラゴンボール映画は復活の狼煙を上げた”と宣言できるだろう
「子ども向け」と「子供騙し」を履き違えていた前作までとは明らかに違った本気度を垣間見れる傑作だ