映画『夜明け』ラストシーンが素晴らしすぎる。今の日本映画が忘れかけている”熱”を持っている作品だ

2019年1月18日に公開される映画『夜明け』

この作品の注目度は非常に高い。

その理由は、是枝裕和監督と西川美和監督の愛弟子”広瀬奈々子”が長編映画初監督に今作でデビューするから。

まずは、作品紹介から見ていきましょう。

『夜明け』作品紹介

ある秘密を抱えた青年・シンイチ、そして水辺で倒れていたシンイチを偶然助けることとなった木工所を営む男・哲郎との”交差しあう心のいきさつ”を描いた映画です。

『夜明け』で主演のシンイチを演じるのは、柳楽優弥。
シンイチを助ける男・哲郎を演じるのが、小林薫。

そして、今作が長編映画監督デビュー作となる広瀬奈々子監督がメガホンを執ります。

あらすじ

田舎の町で木工所を営む哲郎(小林薫)は、ある日河辺で倒れていた見知らぬ青年(柳楽優弥)を助け、自宅で介抱する。
「シンイチ」と名乗った青年に、何故か動揺する哲郎。
偶然にもそれは、哲郎の亡くなった息子と同じ名前だった。
シンイチはそのまま哲郎の家に住むことになり、彼が経営する木工所で働くようになる。
木工所の家庭的な温かさに触れ、寡黙だったシンイチは徐々に心を開いていきます。
そしてシンイチに父親のような感情を抱き始める哲郎。
互いに何かを埋め合うように、ふたりは親子のような関係を築いていく。
だがその頃、彼らの周りで、数年前に町で起きた事件にまつわる噂が流れ始め……。

『夜明け』は日本映画が忘れかけている”熱”を持っている

映画『夜明け』は、物語に登場するシンイチや哲郎という人間をしっかりと丁寧に撮ろうという点が素晴らしい。

繊細な描写や、意図を伝えようとするためのカットなど、”映画”として精巧に作られている感じが非常に好感が持てます。

そして、師匠である是枝裕和監督の特徴である、説明するセリフが少ないという点はやはり受け継いでいるようで安心します。

これにより、物語における描写の大切さや、映像やカットへのこだわりが出ていて、流石と言わざるを得ない。

また、血のつながらない家族の描き方が是枝裕和監督とは対照的で、面白いなと思います。

さいごに、何よりも柳楽優弥と小林薫のが素晴らしい。

公開されたのち、何度も劇場に足を運び、この2人の素晴らしい演技に魅了されに行こうと思います。

映画『夜明け』を織りなすのは柳楽優弥✖小林薫のタッグ

今回の物語の中心になっていくのがシンイチと哲郎。
その中心人物を演じる2人の俳優について見ていきましょう。

柳楽優弥

柳楽優弥は、「ディストラクション・ベイビーズ」「銀魂」「響 -HIBIKI-」などの映画の他、連続テレビ小説「まれ」や「ゆとりですがなにか」にも出演しています。
最近の出演は、「ディストラクション・ベイビーズ」や「ゆとりですがなにか」をはじめ、強いキャラクターがある役を演じることが多くなっています。
その発端となったのは、漫画の実写化ドラマである「アオイホノオ」。
「アオイホノオ」で俳優としての殻を一枚も二枚も破ったような印象を受けました。

そんな柳楽優弥は子役のころから映画で活躍し、なんとデビュー作は是枝裕和監督の「誰も知らない」。
芸能界入りしてから、初のオーディションで是枝裕和監督から”目に力がある”と主役に抜擢。
この作品が2004年、第57回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、当時14歳で史上最年少かつ日本人で初めて男優賞を受賞と輝かしいデビューを飾りました。

今回はその是枝裕和監督の弟子である広瀬奈々子監督のデビュー作で主演を演じるという出来過ぎた流れ。
これは非常に面白いですね!

しかし、このキャスティングを提案したのはプロデューサーの方からで、広瀬奈々子監督自身はあまり望んではいなかったそう。

是枝さんが見出した人を主演に迎えられるは凄く光栄だが、師匠と同じことをしていると思われるのも嫌だ。

そんな形でデビューしたと思われるのもいや、プレッシャーもあった。

このようなコメントも残していますし、柳楽優弥の起用には大きな葛藤があったことは明白です。
しかし、この起用は結果的に大きなプラス要因となったことは作品を見て頂ければ分かると思います。

柳楽優弥という人物が演じたからこそ、成立したシンイチというキャラクター

シンイチという主人公は、広瀬奈々子監督が大学卒業のタイミングでの震災、そして就活などの問題も重なり、悶々としていた時期の感情をベースにして作られました。
この時の感情とは、以下のような感情だったと語っています。

  • 社会とどのように戦っていけばいいのか
  • 世の中に対しての憤り
  • 自分自身の無力感

しかし、震災があったからこそ、色々なことを考える機会ができたし、人生における最悪の出来事ではなかったようにお話していました。
さらに、主人公の受け身な人間だったため、人間関係や物語の構成が難しかったという悩んでいたそうなのです。

そういった反面、「柳楽優弥という役者だったから、受け身だけじゃない、そこからどうにかしなきゃともがく、強いエネルギーを持ったシンイチにしてくれた」
と、役者・柳楽優弥を尊敬する言葉が監督自身から出たことで、この起用は間違いがなかったのだと私も感じました。

先ほども言ったように、最近は強いキャラクターを持った役を演じることが多いですが、柳楽優弥はどこにでもいる青年を演じたとしても最高の表現で私たちに物語を届けてくれます。
そして、”魅力的な目”を持った、主演を張るに値する最高の俳優なんです。

小林薫

最近ではドラマ版に引き続き、映画「深夜食堂」でも主演を務めたことで話題になった小林薫さんですが、主役でどでかいインパクトを残すような俳優ではありません。
しかし、小林薫から醸し出される雰囲気は、どこか故・高倉健のような力強くも奥底に眠る優しさが感じられる。
小林薫の独特の雰囲気こそが小林薫の魅力といえるでしょう。
この雰囲気があることで、映像や物語により一層の深みが増し、小林薫がいるだけでその映画の品が上がるといっても過言ではないでしょう。

柳楽優弥✖小林薫の魅力的なタッグ

先日のインタビューで柳楽優弥は、小林薫について以下のように答えていました。

小林さんがいるだけで現場の”偏差値が上がる”

現場の空気が引き締まるし、頼りがいもある。

さらに、この魅力的な2人がタッグを組むことで化学反応が起きます。

例えば、シンイチが自分のことについて哲郎に告白するシーン。
シンイチ自身の頬へのビンタしているところを、哲郎がその手を止めるという演技なのですが、
小林薫は、腕をつかむのではなく抱きしめてそれを止めたんです。
それに続いて、力が抜けるように座り込む柳楽優弥。
そのあとの小林薫を見上げる表情が言葉に表せないほど素晴らしい表情でした。
救われたかのようにも、恨めしそうな表情にも見えるんです。

こんな化学反応を起こしてくれる2人のタッグは劇場でこそ映えることでしょう。

続いて、今回長編映画初監督を務める広瀬奈々子監督について見ていきましょう。

映画『夜明け』の監督を務める”広瀬奈々子”

監督”広瀬奈々子”は是枝裕和に才能を認められ、その弟子として初めて長編映画監督としてデビューする。
「そして父になる」「海街diary」「海よりもまだ深く」「万引き家族」などの監督を務める是枝裕和監督。
「夢売るふたり」「永い言い訳」などの監督を務める西川美和監督。
その2人の愛弟子である広瀬奈々子監督について、ご紹介していきましょう。

『夜明け』にて長編監督デビューするに至った経緯

広瀬奈々子自身は、7年ほど前に是枝監督の元に付きました。

そこから2014年に制作団体である株式会社「分福」が設立され、是枝裕和監督と西川美和監督の”監督助手”を務めていました。

助監督は現場の衣装や小道具、スケジュール管理が仕事。

しかし、広瀬奈々子監督が務める監督助手の役割は、「監督に対して企画から編集までそばについて意見を言う」という立場。

この役割は、是枝監督が独自に作り出したもので、「現場を進めていくアクセルとなる助監督がいるとしたら、監督助手はブレーキ」と是枝監督自身が語っていたそうです。

監督助手の経験をもち、現場にいたからこそ『夜明け』を監督として作り上げる際、最初にプレッシャーは非常に大きかったでしょう。

その経験を積み、それ以外にもCM監督などの仕事をしてきて、是枝監督に長編映画監督に挑戦を促され、企画を生み出していきました。

しかし、なかなか合格点を貰えない中、やっとGOサインをもらえたのがこの『夜明け』という作品。

広瀬奈々子監督の成長

是枝裕和監督や西川美和監督の下で監督助手をすることは彼女にとって非常に大きな経験となり成長する糧になっていたことは間違いありません。
さらに、広瀬奈々子監督自身が良い刺激と貰ったと話したのは、分福で定期的に開かれる企画会議。
企画を出し合い、意見交換をする会議で、シビアな意見をもらうこともあったそう。
この企画会議があったからこそ、『夜明け』という作品を見つけられたのでしょう。

監督”広瀬奈々子”が描いた『夜明け』の構想について

物語の構想

この物語を作ろうと思った時、絆、家族愛を強く謳われている風潮があったが懐疑的に思っていたそう。

そこで、広瀬奈々子監督は

人と人の美しい所ばかりじゃなく、人間の闇や、どうしようもない部分、エゴ、残酷さをしっかり描いていきたい。

そんな思いでこの物語の構想が完成。

脚本

権威的な人間である男

それに従うのが楽なシンイチ

この人間関係、そしてこの中での人間関係の変化を描きたいと思い、『夜明け』の制作に取り掛かったそう。

これをもとに人間構図を構成。

具体的な構成

何かやらかしたであろう人間が少しずつごく普通の人間に見えてくる

それに対して、

凄く良いおじさんが、徐々に狂気をも帯びて見えてくる

所詮、人間の一面しか見えていない、そういったものを表現しよう構成を制作。

そして、先ほども言ったように、この構成を完成させたのが柳楽優弥。

この作品は柳楽優弥という役者無しでは完成しなかった作品だったかもしれません。

詳細

映画『夜明け』
公開日:2019年1月18日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督・脚本:広瀬奈々子
出演:柳楽優弥 / YOUNG DAIS 鈴木常吉 堀内敬子 芹川藍 高木美嘉 清水葉月 竹井亮介 飯田芳 岩崎う大(かもめんたる) / 小林薫
配給:マジックアワー

予告動画